僕のonly princess
「ありがとう、ございます。私も嬉しかったです……お父さんがいてくれて」
「結花ちゃん……」
涙を流しながら笑う私を本郷さんは強く抱き締めてくれた。
初めて感じる“お父さん”の温もりは、想像していたよりもずっと温かいものだった。
「……あの、薫くんごめんなさい」
ひとしきり、本郷さんに抱き締められて泣いていた私は、涙も止まる頃にようやくそばにいてくれた薫くんの存在を思い出した。
黙ったままずっと私達の成り行きを見守ってくれていた薫くん。
薫くんがそばにいてくれたおかげでちゃんと本郷さんと向き合えた。
でもいざ落ち着いてみると、なんだかとても恥ずかしくなって。
私はソファーに座っている薫くんに苦笑いとも照れ笑いとも思える微妙な笑顔を向けた。
「ん?何が?本郷さんに抱き締められたこと?」
「えっ、いや、違っ」
キョトンと首を傾げて見当違いの爆弾発言らしいことを言う薫くんに私は慌てて首を振って顔を赤くさせた。
そんな私にクスッと笑う薫くんに、からかわれたんだと気付いた私はますます恥ずかしくなって、拗ねるように薫くんを軽く睨む。
だけど薫くんはそんな私にいつもの包み込むような優しい笑顔を見せてくれた。
「よかったね、結花」
「うん……ありがと」
薫くんの笑顔と言葉通り一緒に喜んでくれているその気持ちに、止まっていたはずの涙がまた溢れそうになった。