僕のonly princess
「それって結婚の挨拶をする両家の顔合わせの時にする会話じゃないの?」
私の思っていたことを佐知子さんがさらっと口にした。
敢えて口にされるとますます恥ずかしくなって、顔が赤くなる。
「本当だな。いや、これは気が早かったですかな」
「ハハハ、そうですね」
なんていう父親同士の和やかな笑い声も私の羞恥心を煽る。
なのに私の隣に座る薫くんは恥ずかしがる様子もなく、徐に私の手を握ると涼しい声で当然のように言い放った。
「まだ先のことだけど、将来的にはそうなるんだから予行練習ってことでいいんじゃない?」
満面の笑みで繋いだ手を口元に寄せて、「ね?」と同意を求めてくる薫くんに私は耳まで赤くして思いっきり俯いた。
リビングに広がるみんなの温かな笑い声を俯いたまま聞きながら、私はこれ以上ないほどの幸福を体中で感じていた。