僕のonly princess
「……そっか、それは心細いね」
「江本くん、あの……」
「一緒に迷子センターに行ってみようか?その子のお母さんも探しているだろうから」
切なそうな表情のまま、少し言い難そうに何かを言いかけた結花ちゃんの言葉に俺が被せるようにそう言うと、結花ちゃんは一瞬、目を丸くして、でもすぐにパッと花が咲いたような笑顔を浮かべた。
「ありがとう、江本くん」
自分のことじゃないのに、本心から嬉しそうにお礼を言う結花ちゃんの笑顔にまた胸がキュッとする。
何だろう……この感覚。
今まで感じたことのないそれに心の中で戸惑いながらも、俺は結花ちゃんに微笑み返して頷いた。
「えっと、ボクお名前はなんて言うの?」
「かたおか…たいち」
蹲る男の子に視線を戻した結花ちゃんが優しく名前を聞くと、小さな声が返ってきた。
「たいちくんか…、私は鶴見結花って言うの。よろしくね」
結花ちゃんは自分も自己紹介をして、膝に顔を埋めるたいちくんの頭をそっと撫でた。
「たいちくん、私達と一緒にママのこと探しに行こうか。ママもたいちくんのこと探しているよ」
「……うん」
優しい声で続けた結花ちゃんの言葉に、たいちくんは俯かせていた顔を少しだけ上げて頷くと、涙で濡れていた目をゴシゴシと乱暴に手で拭った。