僕のonly princess
「はい」
涙を拭いて顔を上げたたいちくんに結花ちゃんは笑顔で手を差し出す。
目の前に差し出された手を数秒、じっと見てからたいちくんは戸惑いがちに小さな手を重ねた。
「きっとすぐにママに会えるよ」
結花ちゃんに手を引かれて立ち上がったたいちくんに結花ちゃんはとっても優しい声と笑顔で話しかける。
不安そうな顔をするたいちくんを安心させたいんだろう。
「うん…」
たいちくんも不安で固い表情のままだけど、結花ちゃんに小さく頷いた。
きっと結花ちゃんの優しさがたいちくんにも届いてるんだ。
たいちくんの小さな手をキュッと握りしめて、結花ちゃんがそばに立つ俺を見上げた。
「じゃあ、行こうか」
そっと笑いかけて、手を繋ぐ二人と一緒にゆっくりと歩き出した。
迷子センターの場所を頭の中で思い出しながら、二人の一歩前を歩く。
俺の後ろでは、結花ちゃんがたいちくんに明るい声でアレコレ話しかけている。
幼稚園のことを訪ねたり、俺の知らないアニメの話をしたり。
たいちくんをこれ以上不安にさせないように、明るく、でも優しく話しかけている結花ちゃんはなんだかとても小さい子供に慣れているような気がした。