僕のonly princess
「その時、江本くんのことを好きになったの」
テーブルの端を見つめながらそう小さく呟いた結花ちゃんは、大切な思い出を口にするような優しくて穏やかな顔をしていて。
その表情はいつもよりもずっと大人びて見える。
そんな結花ちゃんの表情と思いがけない告白に、俺は柄にもなく顔が赤くなるのを感じた。
ドキッと高鳴る心臓。
自分のそんな反応に戸惑いながら、赤くなった顔を隠すように手元の水の入ったグラスに視線を落とした。
「あ…、ご、ごめんなさい。こんなこといきなり話して」
それに気付いた結花ちゃんはパッと表情を変えて慌て出した。
さっきまでの大人びた表情からいつものオロオロする小動物のような可愛らしい彼女に戻った結花ちゃんに、少しホッとした俺は小さく笑って首を振った。
「ううん。謝らないでいいよ……って言うか、ありがとう。なんか嬉しいよ」
確実に赤い顔をして言ってる自覚はある。
でも自然と素直にそう言葉が口を吐いて出ていた。
そんな俺に結花ちゃんは目を見開いて、大きな瞳で俺を見つめる。
そしてすぐに俺以上に真っ赤になって俯くと、「えっと、その……」と焦り出す。
らしくない顔をしているだろう自分に余計に恥ずかしくなりつつも、そういう結花ちゃんの反応が可愛らしくて、自然とクスクスと笑い声が出た。