僕のonly princess
夕方近くになって、ゆいかちゃんを駅まで送る。
別方向の電車に乗る結花ちゃんとは改札を入ったところでお別れだ。
家まで送ろうかと言った俺を結花ちゃんはなぜかとても丁寧に断った。
まだ時間も早いからと言う結花ちゃんに俺は少し寂しい気持ちを感じた。
……こんな気持ちになるのも初めてだ。
今まで送ってほしいと言われて正直面倒だなと思ったことはあっても、断られて寂しいと思ったことなんて一度もない。
別れる間際、何度も今日のお礼を言う結花ちゃんにそんな自分の気持ちを悟られないように笑顔で頷いて「また行こうね」と声をかけた。
自分の乗るホームへ向かう結花ちゃんは、階段を上る間際、俺を振り返って照れた顔で、それでも嬉しそうに小さく俺に手を振る。
そんな彼女が階段の先に消えていくのを見送りながら、俺は今日何度も感じた今までとは違う自分の心の内に戸惑っていた。
ゆいかちゃんが今まで一緒にいた女の子達とはタイプが違うから?
今まで誰にも揺れたことのない感情に小さな波の気配を感じて、俺は一人で帰る電車の中で落ち着かない気持ちを抱えていた。
……他の誰かに揺れるなんて、有り得ないのに。