僕のonly princess
最初は年の離れた姉を独占したいっていう気持ちだったのかもしれない。
幼稚園児の俺と小学6年生の佐知。
当然、佐知には俺の知らない学校の友達がいて、うちにも遊びに来ていたし、佐知からも友達の話をよく聞いていた。
その度に何だか取り残されたような気がして、俺は佐知に我儘を言ってみたり、わざと困らせるようなお願いをしてみたり……佐知の気を引きたくて仕方なかった。
佐知はその度に困ったように笑いながらも、俺の我儘もお願いも全部聞いてくれた。
そして必ず『薫が大好きだよ』と言って、頭を撫でてくれた。
佐知のその手が大好きだった。
“佐知は俺のもの。”
幼い俺はずっとそう信じていた。
だけど、俺が小学校に入学した頃、中学生だった佐知は学校が忙しくなったのか、前みたいに俺だけを優先してはくれなくなった。
それがすごく寂しかった。
それでも俺の前での佐知は優しいままだったし、どんどん離れていく気がしていても佐知はやっぱり俺のものだと思っていた。
そして俺はその頃には佐知が好きだと自覚していた。
姉としてじゃなく、異性として。
佐知の笑う顔が好きで、佐知が俺に触れてくれる手が好きで。
誰にも渡したくない。
笑顔もその手も俺だけのものにしたいと、まだ7、8歳にしてはませガキだった俺は心からそう思っていた。