僕のonly princess
「え、江本くん!?」
「帰ろう、結花ちゃん」
ピクッと体を震わせて俺を見上げる結花ちゃんの手を引いて、俺はさっきまで騒がしかった女の子達の脇を通り抜けた。
彼女達が俺の言葉と行動にびっくりして怪訝な顔で俺達を見ているけど、そんなのに構うつもりはないから、少し早足でその場を去った。
俺達の後ろで、彼女達が結花ちゃんを睨んでいることも知らずに。
その時の俺は自分では気付いていなかったけれど、初めて自分から女の子の手を握ったんだ。
今までは決してなかったその行為。
更に、俺から女の子に会いに来るということ自体が今までの俺にはないことだった。
結花ちゃんに会いたいから会いに行っただけで、自分ではそんなこと気にもならないことだったけど、今までの俺のことを知っている他の女の子からすればそれは驚くべきことだったらしい。
それが彼女達に結花ちゃんへの逆恨みに似た醜い感情を生むことなんて、俺には想像もできていなかった。