僕のonly princess
その後、いつもの駅前のカフェに入った。
俺の向かいに座った結花ちゃんはまだ赤い顔をしている。
そしてソワソワと落ち着かないのか、メニューを見たり俯いたり忙しい。
そんな結花ちゃんに俺はふふっと笑みを漏らす。
本当に小動物みたいに可愛い。
「ごめんね、約束もしてないのに迎えに行って」
俺がそう謝ると、結花ちゃんは顔を上げて小さく首を振った。
「ううん。びっくりしたけど、今日は江本くんには会えないと思っていたのに会えて嬉しいよ」
そう言って微笑んでくれる結花ちゃんに、ホッとして心がじわりと温かくなった。
「今日もチョコレートケーキ食べる?」
柄にもなく、照れてしまいそうになるのを誤魔化すように手元のメニューを見ながら訊ねると結花ちゃんは少し悩むように『うーん』と言って。
「こんな時間に食べると夕ご飯食べられなくなりそう」
と、真面目な顔をした。
それが可愛くて俺は思わず『プッ』と噴出してしまった。
「じゃあ、俺と半分こしようか?」
そう提案して、店員さんにチョコレートケーキと結花ちゃんの紅茶と自分のコーヒーを注文した。
結花ちゃんと半分こして食べたチョコレートケーキは、今まで食べたどれよりも甘く感じた。