僕のonly princess
嫉妬と決意と落ち度
*結花side*
委員会を終えた私は、いつもより遅い時間に学校を出た。
校門の前に人だかりができていて、何事だろう……と思っていると、その中心に江本くんがいるのが見えた。
どうして彼がここにいるのかわからなくて、びっくりするのと同時に、女の子達に囲まれた江本くんにキリッと心が痛んだ。
小さく彼の名前を呼んだ私の声にすぐに気付いてくれた江本くんが、私のそばに来てくれて。
『結花ちゃん、おかえり』
なんて言われて、驚くことしかできなかった。
なのに江本くんはもっと驚くことを言った。
『結花ちゃんに会いたくなったから来たんだ。ダメだった?』
ちょっと不安そうに眉を下げて首を傾げる江本くんは、男の人なのに可愛らしくて私のドキドキと暴れる心臓が更に大きく鳴り響いた。
ダメだなんて、あるわけない。
今日は遅くなるから会えないと思っていたのに、こんな風に迎えに来てくれて嬉しくないはずがない。
しかも『帰ろう、結花ちゃん』と言った江本くんは私の手を握ってくれた。
手を繋いだままさっきまで彼を囲んでいた女の子達には目も向けずに、江本くんは私を連れてあっという間に学校を後にした。
いつものカフェに着くまで繋がれていた手。
初めて繋いだ江本くんの手は男の人の手らしく、少し骨ばっていて大きくて。
でも滑らかで繊細そうで。
そして、とても温かかった。
江本くんが私と半分こしてくれたチョコレートケーキは、前に食べたものと同じはずなのに、もっとずっと甘くて美味しく思えた。