僕のonly princess

次の日、私はとても幸せな気持ちで学校へ登校した。


江本くんが会いに来てくれたことも、手を繋いでくれたことも、半分こして食べたチョコレートケーキのことも。
思い出すと勝手に顔が緩んでしまうほど、幸せだった。


ドンッ！


下駄箱から靴を履きかえていた私の背中にいきなり何かがぶつかって、私は体制を崩してよろめいた。


「あら、ごめんなさい。小さくて貧相過ぎて、目に入らなかったわ」


顔を上げて振り向くと、4、5人の女の子達が私のことを見下すような目をして笑っていた。


「……いいえ、大丈夫です」


一瞬、その笑顔が怖いと感じて私は俯きながら小さく答えた。


それにまた声を上げて笑うと、彼女達は私を見下したままの瞳で忌々しそうに言葉を投げた。


「あなたみたいな子がどうやって薫くんに取り入ったのかしら？あなたまさかとは思うけど、自分のことを薫くんの彼女だなんて勘違いしてないでしょうね？」


「勘違いなんて！江本くんとはちゃんとお付き合いしています」


私は反射的に声を上げて、言い返していた。
だって、勘違いだなんて……江本くんは告白した私に付き合おうって言ってくれたんだから、今、私は江本くんの彼女のはずだ。


「あら、“ちゃんと”ってあなた薫くんのこと知らないの？薫くんみたいな人があなたみたいな地味で貧相な子とちゃんと付き合うはずがないでしょ。遊びにもならないんじゃない？」


とことん私を馬鹿にしたいのか、嘲るような表情で笑い声を上げて、彼女達は廊下の先に消えて行った。