僕のonly princess
『遊びにもならない』
江本くんの噂は私もちゃんと知っている。
来るもの拒まず、去る者追わず。
誰とでも付き合うという江本くん。
あの日、江本くんに告白した日。
偶然、学校の帰りにあのカフェの前を通っていた私は、江本くんの前から立ち去る女の人を見た。
話し声が聞こえたわけではないけど、立ち去る時の女の人の表情を見て別れ話をしていたんだと直感した。
江本くんは彼女がいる時は他の女の子とは付き合わない。
だけどフリーの彼は、告白してきた女の子を拒まない。
それを知っていた私は、チャンスだと思ってしまった。
さっき女の子と別れたばかりの江本くんに告白すれば、私なんかでも付き合ってもらえるかもしれない……と、そんな風に思ってしまったんだ。
さっきの彼女達が言うように私は地味だし、特別見た目がいいわけでもない。
背も低い方で、本当に目立たない存在。
そんな私が江本くんと付き合いたいなんて、夢のまた夢だと思っていた。
でも、ほんの少しでもチャンスがあるのなら勇気を出したい。
そのチャンスが今なら、私は迷わず手を伸ばしたいと思った。