僕のonly princess
いつも待ち合わせている駅の改札を抜けて、売店の前にいる結花ちゃんを見つけた。
だけど、いつもとは違う状況が目に飛び込んできて、俺は急いでいた足を止めた。
結花ちゃんが男と一緒にいる。
一瞬、ナンパか?と思ったけれど、二人の表情を見てそうじゃないとわかった。
二人ともどこか真剣な顔をしていて。
何を話しているかまでは聞こえないけど、二人を纏う空気が特別なものに見えた。
胸がキリッと小さく軋んだ気がした。
「結花ちゃん、お待たせ」
胸に感じた違和感を抑え込んで、真剣な顔でお互いの顔を見つめ合っているような二人のそばへ近づいて、俺は結花ちゃんにいつもと同じように声を掛けた。
俺の声、不自然じゃなかったよな?
と、気になるほど心の中ではモヤモヤが渦巻いているけど、それを知られたくなくて、俺の声に振り返った結花ちゃんに笑顔を向けた。
「……江本くん」
小さく俺の名前を呼んだ結花ちゃんの顔が気まずそうに微かに歪むのを見逃さなかった。
……コイツといるのを俺に見られたくなかった?
胸の軋みがまた、俺を襲う。