僕のonly princess
結花ちゃんとのデートがキャンセルになった次の日の放課後。
結花ちゃんが委員会の日だから、今日もデートの約束はない。
だからってわけでも…あるけど、今日は吾郎と忠と遊んで帰ろうということになって、三人並んで校門を出ようとしていた。
「……江本薫」
校門を通り過ぎようとした俺は、突然校門の前に凭れるように立っていた他校の制服を着た男に呼び止められた。
しかも機嫌の悪さを滲ませた低い声でフルネームを呼ばれて驚きながら、足を止めた。
「えっと……あぁ、確か倉石くん?」
そこには声と同じく不機嫌そのものの顔をしている倉石くんがいた。
「ちょっと話がある」
俺を睨みながら、ぶっきらぼうに言った倉石くんは俺の返事も聞かずに歩き出した。
俺がついて行かないっていう考えは彼にはないようだ。
でもそれは倉石くんの思惑で正解。
だって、倉石くんが俺のところに話があるなんてやってくる理由は一つしかないから。
結花ちゃんの話だろう。
それがどんな話なのかはわからないけど、倉石くんの表情と態度からしていい話ではないんだろうな。
それでも俺は逃げる気はない。
倉石くんから向かってきたのなら、俺はきっちりそれを受け止めなきゃいけない。
それがどんな内容でも。
結花ちゃんに関することなら、逃げるような真似は絶対にしたくない。