僕のonly princess
「吾郎、忠。悪いけど一緒に遊びに行くのはまた今度な」
「おい、薫。大丈夫なのかよ?」
訝しげに俺の隣に立っていた二人に声を掛けると、忠が怖い顔をして訊ねてきた。
俺にことを心配してくれているんだろう。
吾郎も忠と同じで眉を顰めて俺を見ている。
俺はそんな二人に笑顔を見せて、「大丈夫」と頷いた。
「話をするだけだよ。ごめんね、また明日」
まだ怖い顔で心配そうにする吾郎と忠に手を上げて、俺はすでにだいぶ向こうへ歩いて行っている倉石くんの背中を追いかけた。
「ごめんね、お待たせ」
俺が追いかけると、倉石くんは立ち止まって待っていてくれた。
そして二人で学校の裏門から中へ入って、誰もいない場所で足を止めた。
「それで俺に話っていうのは……結花ちゃんのことかな?」
まず口を開いたのは俺。
こういう時に黙ったまま沈黙に耐えるのは得意じゃない。
「ああ。アンタ、今結花がどんな目に合ってるか知ってんのか?」
俺の質問に口を開いた倉石くんは、感情を抑え込んだような低い声で俺を強く睨みながら質問を返してきた。
「……どんな目って……どういうこと?」
「やっぱり何にも気付いてないのか」
倉石くんは強い目で俺を睨んだまま、俺を馬鹿にしたように言い放った。