僕のonly princess
「…今さっき?」
ゆいかちゃんが口の中で小さく呟いた言葉には答えずに、俺は自分から踏み出してゆいかちゃんとの間にあった距離を縮めた。
「よろしくね?ゆいかちゃん」
すぐ間近で、俺よりも20㎝くらい低いゆいかちゃんを見下ろしながら笑顔で声をかける俺にゆいかちゃんはボッと音が出そうなくらい一気に赤くなる。
「は、はいっ。よろしくお願いしますっ」
そう言ってまたガバッと音を立てて、頭を下げた。
そのテンパり具合や、必死さが可笑しくて無意識に笑いが零れる。
可愛らしい子だな。
いつもと違う自分の感情にも気付かないほど、自然にそう思っていた。
だけど同時に。
心の中で、こんな子をいつもみたいに気付けるのか?
と、警鐘を鳴らす冷めた俺も存在していた。