僕のonly princess
「頭から濡れたまんまで帰ってきたアイツは『平気だよ』って笑ってたけど、全然平気そうじゃなかった。見てるのが辛いくらい痛々しかった」
倉石くんが話す結花ちゃんの姿を想像して、俺はますます胸の痛みが大きくなる。
『平気だよ』と言って無理やり笑う彼女の笑顔が頭に浮かんで、結花ちゃんにそんなことをした奴らに怒りが込み上げた。
それと同時に、どうしてそこまで結花ちゃんの様子を倉石くんが知っているのか疑問を持った。
『早く帰って来いよ』
初めて倉石くんと会った日、結花ちゃんに倉石くんが言った言葉。
それに当然のように頷いた結花ちゃん。
あの時感じた違和感が、また俺を襲って嫌な焦燥感が湧いてきた。
幼馴染だと言った二人の関係。
だけど、ただの幼馴染じゃなくて、もっと俺のわからない別の関係があるような気がして焦りが増す。
傷ついてる結花ちゃんの心配と。
結花ちゃんを傷つけた奴らへの苛立ちと。
その結花ちゃんのことをよく知る倉石くんへの焦燥感。
そして、何も気付けていなかった自分への怒り。
俺の心の中はそんな色々な感情でグチャグチャになってしまいそうだった。