僕のonly princess


その後どうやって家に帰ったか記憶にない。
ただ、俺の心を占めているのは結花ちゃんを救わないといけないという想いだけ。


どうしようもない俺と一緒にいても彼女は幸せにはなれない。


俺にできるのは結花ちゃんと別れて彼女を自由にすることだけ。


倉石くんから言われた言葉が胸に刺さる。
でも彼の言う通りだ。
結花ちゃんをこの手で守ってあげたいけれど、穢れた俺の手を彼女に伸ばすことはきっと間違いなんだ。


帰宅して、最近は毎日理子ちゃんと遊んで過していたけれど、今日はそんな気持ちになれずに、俺は自分の部屋に閉じ籠って悶々と考え込んでいた。


どれくらい時間が経っただろう。
途中で夕食だと佐知が声を掛けに来てくれたけれど、食欲がなくて食べにも行かなかった。


外はとっくに真っ暗になっていて、電気も点けずに考え込んでいた俺は、決心するようにスマホを手に取ってメールを打った。


『明日、会いたいからいつもの売店の前で待ってる』


送った相手はもちろん結花ちゃん。


数日会っていない彼女にあんなにも会いたいと思っていたのに。
今は会うのが怖い。


明日結花ちゃんに会って、俺は………


彼女に別れを告げるつもりだから。


嫌いになったわけじゃない。
寧ろ、結花ちゃんにはずっと俺の彼女でいてほしい。


でもそれは俺の我儘だ。
俺のせいで傷ついている彼女を救う方法はそれしかないと俺は痛む心を無理やり抑え込んで、結花ちゃんとの別れを決めた。


それが間違った方法だとも、もっと別の守り方があるとも気付かずに。


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