僕のonly princess
次の日、俺は放課後、鉛のように重い足取りで結花ちゃんとの待ち合わせ場所に向かっていた。
結花ちゃんと待ち合わせるのに、こんな重たい気持ちで向かうなんて初めてだ。
いつも結花ちゃんと会う時は、早くあの可愛らしい笑顔が見たくて嬉しくて仕方がなかった。
でも今日は息苦しいほどの気持ちを抱えて、重たい足を何とか前に向けていた。
いつもの待ち合わせの駅の改札を抜けると、売店の前に結花ちゃんが立っていた。
疲れたような元気のない表情で、結花ちゃんは俯き加減で立っている。
元々細いその肩が更に細くなったように思うのは、彼女にいつもの元気がないからなのか。
それとも、心に傷を負ったせいでたった数日で痩せてしまったからなのか。
どちらにしても頼りなさげで、憂いた表情(かお)をしているのは俺のせいだ。
キリッと胸を突く痛みに、顔が歪む。
俺は深く息を吸い込んで、結花ちゃんの元へと近づいた。
「お待たせ。呼び出したりしてごめんね」
結花ちゃんの前に立って声を掛けると、結花ちゃんはパッと顔を上げて優しく微笑む。
いつもは可愛らしくて俺の心を温かくしてくれるその笑顔さえ、痛々しく見えた。
「ううん。私も薫くんに会いたかったら、メールもらって嬉しかったよ」
俺に会いたかったと言う結花ちゃんの言葉は、こんな時でも嬉しいと思う。
俺に気遣うように笑っている結花ちゃんを抱き締めてしまいたい衝動に駆られた。
だけど……俺は彼女に手を伸ばしてはいけないんだ。
闇の中から抜け出せない穢れた俺が、純粋で真っ白な君に触れることは許されないことだ。