僕のonly princess
すれ違う決意
今まで何度も女の子と別れてきた。
だけど一度だって自分から別れを切り出したことなんてなかった。
ただいつも、乞われるままに付き合って。
絶対に揺らぐことのない心で、相手のことを俺からは何も求めない。
手を繋ぐこともない。
相手から絡められれば拒否はしないけど、俺からはない。
俺から会いに行くことも、会いたいと言うこともなかった。
乞われれば身を重ねることもあったけど、それすら俺からの欲求ではなかった。
すべてが受け身。
だってどうだってよかったから。
俺の闇に満ちた心に住むのは佐知だけだった。
他の女なんて俺にとってはみんな同じ。
欲しいなんて思ったこともなかった。
誰と一緒にいても心は闇で覆われたまま。
冷たく暗いその中で、感情もなく乞われるだけの行為をする。
だからどの子もいつもすぐに気付いた。
俺の気持ちが自分に向いていないのだと。
そして期間はバラバラだけど、至極短い時間で俺に嫌気を差す。
いつも決まった台詞で彼女達は俺に別れを告げた。
『薫は私のことを好きじゃないんでしょ』と。
そして俺も決まった台詞でそれを肯定する。
『俺と一緒にいても君は幸せにはなれないよ』
―――俺は君を愛したりしないから。
そういう意味を含ませたその言葉に、誰もが去って行った。
当然だ。
それを望んだ上で発した台詞なんだから。