僕のonly princess
しばらくお互い黙ったまま歩き続けた。
俺は乱暴に結花ちゃんの手を引いて、前を睨みつけるように歩いていた。
さっきの結花ちゃんに向けられていた男達の欲望の篭った眼差しにイライラがなかなか治まらない。
俺以外の男が結花ちゃんをあんな風に見るなんて我慢できない。
『もっと話していたかった』なんて、ふざけんな!
結花ちゃんに下心見え見えで話しかけるなんて、有り得ない!!
………。
怒りをぶつけるようにガンガン歩いていた俺は、そこでハッとした。
俺は何を馬鹿なことを考えているんだ。
結花ちゃんとは別れたんだ。
他の誰かと幸せになって欲しいと願ってるんだろ?
他の誰かに取られることに焦って、苛立つなんて……
自分の願いと行動が真逆過ぎて、呆れることもできない。
俺はそれまで夢中で歩いてきた足とピタリと止めた。
急に止まった俺に結花ちゃんは少し前のめりになりながら、慌てて止まった。
「薫く……」
「結花ちゃん、あんなところに来ちゃダメだよ」
立ち止まった俺に結花ちゃんが声を掛けてくるのを遮るように、冷たい声で言い放った。