僕のonly princess
*結花side*
学校の帰り道、駅に向かうために歩いていた私は、前から歩いてくるカップルに思わず足を止めてしまった。
同じ学校の同級生の中村さんと……薫くんだった。
薫くんの腕にべったりと腕を絡めて、甘えるような声で話しかけている中村さん。
その声はまるで周りに聞かせるように声高で、優越感に酔っているみたいに見えた。
薫くんはそんな中村さんの顔は見ないで、相槌だけ打っている。
でもその表情は優しくて、いつもの薫くんのものだった。
心がキリッと何かに刺されたみたいに痛む。
薫くんの腕に絡んだ中村さんの手も、甘えるような声も、薫くんを見上げる顔も全部、嫌だと心の中で悲鳴を上げた。
二人から目を逸らすこともできず、立ち尽くす私の横を通り過ぎる薫くんと中村さん。
俯き加減の薫くんは私には気付いてさえいないかもしれない。
だけど中村さんは通り過ぎる瞬間、呆然とする私をチラッと見て勝ち誇ったように笑みを浮かべた。