深海魚Lover
切り裂かれたシャツの上から俺の傷口に触れ、押さえる手

その手に、現れる血色

その手を伝い、流れる赤色


『クロス
 
 ……連れて来いや』

『放せよ、そいつは関係ない!

 聞こえねえのか?

 今すぐ放せ、でないとお前を
 遣るはめになる』


「あん時と同じ目
 おいおい、そんな目で見んなって
 
 俺のこと覚えてるみたいやなぁ
 って、忘れられるわけないか
 確か三年ぶり」


固く握り締めた拳に触れる、柔らかな手の感触。


「ケイジさん?」

「キョンさん?」

「いやっ、何でもない

 行こう」


前を向いて歩き出した俺に聞こえる声----


「また近いうち会おな

 ほんなら」

「ケイジさん、知ってる方……」

「振り向くなっ!!」
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