深海魚Lover
京次さんのドスのきいた声。

私は驚き立ち止まる。


「振り向くんじゃない、行こう」


私の頭を自分の胸元に押し当てて、私の顔を隠して貴方は歩く。


「黒須さんのお知り合い?
 
 男前な方、背もたこう(高く)て
 
 うちに紹介してくれはったら
 よろしかったのに」

「アホ、お前は知らんでええ
 
 それに知っても波の女が
 相手して貰われへんわ

 ものごっつうええ女が
 アイツの傍には居った
 命かける女……
 
 お前みたいな泣き虫ちゃんは
 相手にならん」

「もう、また
 そないないけず(意地悪)言う」

「……死んだはず」

「えっ、何?」

「何でもない、いこか」
< 128 / 410 >

この作品をシェア

pagetop