深海魚Lover
翌日、旅行を終えた私達は家路についた----

京次さんはあの男性と会った後、ふと何かに気を取られる場面はあったものの、その後はいつも通りでとっても楽しい時間を過ごす事ができた。

初めての旅行に大満足だった私は、京次さんの怒ったあの低音の声のことを今後も気にする事はなかった。

京次さんの過去に起きた悲しい出来事を、私は今はまだ知らない。


留守の為に締め切られた部屋には淀んだ空気が流れていて、新しい清々しい空気に入れかける為に家中の窓を開けた。

一番奥の部屋、写真の前に供えられた京都のお土産。

写真の中の彼女は、今も色褪せることなくとっても綺麗。


病気の妹、妻……もうこの世にはいない、亡くなった人。
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