深海魚Lover
少しだけでは終わらないのが、女性のお喋りタイム。

次々に話題が出てくる出てくる。

以前の私ならばきっと、こういう時間を窮屈に思っただろう。

人の悩みや生活のあれこれを聞くだなんて……人と深く繋がり合うことは極力避けたかった。

でも今の私はそれを面倒に思うどころか、とても楽しい時間だと思える。

京次さんとこの家で暮らすようになってから、自然と時間がある日は書道教室のお手伝いをするようになって、とは言っても授業を終えた生徒さんにお茶を出したり、部屋の片づけを手伝ったりすることぐらいだけれど、そこで出会った人達と京次さんを通していつの間にか親しくなっていた。

特に雛田さんはお母さんのように親しみやすくてついつい時間も忘れて話し込んでしまう。


「メイコちゃん
 林檎、ひとつむいちゃう?」

「はい、頂きます」


林檎をクルクルと回しながら皮をむいていくと途切れて、赤い皮がヒラリと床に落ちた。

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