深海魚Lover
そんな私はたまに、やむ終えず地上に出る時があるけれど必要な事以外は話さない。

街中、行ったり来たりする人々の波に押されながら、私は呼び出された出版社の前に立つ。


「スガ先生
 
 わざわざ、足を運んで頂いてすみません
 
 …… 

 この間の表紙の絵に添えられた
 この一文は確か先生が?」


絵を描きながら余白に感じた事をメモ程度に書いた言葉。


「はい、まあ」

「それで今回、お話なんですが
 絵本書いてみませんか?」

「絵本ですか!挿絵じゃなくて?」

「はい、ぜひ、考えて頂きたい」


突然の話に、私はできないと手を左右に振る。


「文だなんて書いた事ありません」

「……

 スガ先生の絵のワールド、その
 世界観を一番理解されているのは
 誰でもない先生、お一人だけ
 
 どうでしょう、文が苦手という事
 でしたら編集者の人間が全力で
 アドバイスを致しますが

 そうだ!

 この際、作家さんに依頼して
 共同作品とするのもいいかも
 しれませんね、いかがでしょうか?」
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