深海魚Lover
七年ぐらい住んでいた深海にさよならを告げて上へ上へと上りついた深海魚は、この夏の強い陽ざしの下、今にも天日干しにされてしまいそうで苦しい。


夏の午後、うだるような暑さの中を私は歩いてる。


西日が何とも、暑苦しい……。


燦々と照りつける太陽は容赦なくて、しんどさに俯いた地面からもジリジリと照り返す。

つーっと背中を流れる汗の感覚が何とも気持ち悪い。


あ~、喉がカラカラで何か飲みたい。

額の汗も拭いたいよ。


だけど、私の両手はただ今塞がっている。

荷物を持ってる右手に、繋いだ左手。


私の手を握りしめる、小さな手。


「……それでね
 
 メイちゃん、きいてる?」

「うん
 
 そうだ、ジュン君
 あそこでジュース飲まない?」

「うん!のむ、のみた~い
 
 でも、いいのぅ?」

「いいよ、メイちゃんのおごり」

「わぁーい」


立ち寄った喫茶店は、重厚感のある内装に店主の拘りを感じる。

店内は涼しくて気持ちいい、汗がスーッと引いていく。
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