深海魚Lover
『そうだよなぁ、ジュン
 一番は、もういるもんなぁ』


潤司君の一番に慣れないことは承知してる。

だけど、京次さんの一番には、できればなりたくて……。


ううん、私は理解してる。


亡くなった奥さんはもちろん、京次さんの一番は潤司君なのだということを。


一番に慣れなくてもいいの。

私はこの生活を失くすのだけは、ぜったいに嫌。


食器乾燥機に並べられた、お揃いの食器。


誰かと一緒に過ごす日々が当たり前になる頃、私から強さはどんどん剥がれ落ち、消えてなくなる。

一人で完璧に何でもこなしてきた、今までの私が嘘のように……

今の私では以前のように、あの大好きだった自分の住処(深海)・部屋ではもう息をすることもできないだろう。



片づけを終えた私が居間へ戻ろうとしたその時、大きなハサミを手に持つ潤司君の姿が見えた。

危ない!

そう思ったけど、気づくのか遅かった……


「イタイッ!」

「ジュン君、切ったの
 指、見せて!?」

「わ~、イタイよ、えーん」

「何だ、なんだ!?
 
 どうした、ジュン?」
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