深海魚Lover
「もう、アンタはあっちに行ってなさい」

「はいはい、ごゆっくりどうぞ」

「ハルト、出かけるんでしょう
 いつ帰るの、晩御飯は?」

「要らねぇ」

居間へ入るとそこには父の姿が……どういう反応を取るだろう、わたしはとても不安過ぎる。

「お父さん」

「ああ、帰ったのか
 いらっしゃい

 さあどうぞ座って

 母さん、お茶」

「ハイ、今すぐ」

「ケイジさん、コート貸して」

「ああ、ありがとう」

京次さんから預かったコートを畳んで自分のすぐ傍に置く私。

「外は寒かったかい?」

「いえっ……」

「緊張して熱いわよねぇ?」

「お母さんっ」

母も来たところで京次さんの挨拶が始まった。

ドキドキする私の胸----

「はじめまして
 芽衣子さんと結婚を前提に
 お付き合いをさせて頂いています
 井原京次です

 あの、心ばかりのものですが
 皆様で……」

「まあ、ケーキ
 頂いてよろしいの

 ありがとうございます

 それで、結婚式はいつ頃に?」

母の唐突な発言に驚く私。

「おっ、お母さん!」

「何、結婚するんでしょう?」

「もう……」
< 344 / 410 >

この作品をシェア

pagetop