深海魚Lover
いくら困難を乗り越えて恋が成就しても、それは……なんか違う。

そして、束の間、私は虚しさに支配される。


だけど私は、今の自分を変えようとは思わない。

人を信用する事はもちろん、誰かの事を深く愛したりはしない。

それは男女に限らず、私は人間と距離を取って生活を送る。

ずっと海の底で暮らせるのなら、幸せ。

外の世界になど、羽ばたきたくはない!


時刻は只今、17時----

出版社を出た後、画材を見て本屋さんに立ち寄った私は、自分へのお土産をたくさん持って帰路に着く途中、ペットショップの前で立ち止まった。

出かけた際には、よくこのペットショップを覗く。

だけど、可愛らしいこの動物でさえ飼う事は面倒で……

しばらく動物を見ていると、店の自動ドアが開いて店員さんが現れた。


「あの~、お久しぶりですね
 
 今日こそは中に入られませんか?
 気になるコ、抱いてあげてください」

「いえっ、結構です!ごめんなさい」


逃げる様に歩き出した私は角を曲がったところで、知らない人と肩がぶつかった。
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