【短編】放課後の生徒会室
「・・・・・・ちくしょう」
小さく呟いて、組んだ両手の上に額を乗せる。
女というのは、実に厄介だ。
意図も簡単に、僕のことを振り回す。
本当、困る。
それに、疲れる。
ただそれは、阿久津や福澤と接しているときの疲れとはまた違った意味の疲れで。
何が違うのかと聞かれると、種類が違うとしか答えようがないのだが。
それは僕にとって、決して悪くない、疲れなのかもしれない。
「会長?大丈夫ですか?」
「それ、は・・僕の台詞だ・・・!」
「・・・え?」
「お・・おま、お前の方こそ・・・正気の沙汰じゃないな、ぼ、僕にこ、告白する・・なんて・・・おかしい、だろ、絶対・・・」
腰を数センチ浮かせ、震える両手で机を叩く。
自分の手がこんなにも震えている理由も、口がうまく回らない理由も、僕にはあまりよく分からない。
が、とりあえず目の前の彼女が唖然とした表情を浮かべているのだけは分かる。
「・・・会長、もしかして、焦ってます?」
「そ、それは・・焦るに決まってるだろ・・・」
浮かせていた腰を、大人しくパイプ椅子に沈める。
僕としたことが、少しばかり感情的になってしまった。
ふぅ、と息を吐いて、気持ちを落ち着かせる。
ああ、考えている分には全然楽なのだが。
それを言葉にするのは何故こうも難しい。
言葉にせずとも伝われば、どんなに楽か。
と、僕は度々思う。
そうすれば、余計なことを口走って、今みたいに恥をかくこともないのに。
「・・・・なぁ、」
「はい」
「本当に、僕で良いのか」
「はい」
「そうか」
「はい、そうじゃなきゃこんな、取り乱したりしませんから」
「ははっ、それはそうだ」
彼女は、まだほんのり赤い顔で、前髪を整える仕草をした。
ああ、そうか。
取り乱したといえば、僕も、かなり取り乱したよな。
こんな姿、あの二人に見られようものなら、僕はお仕舞いだ。
やはりアレは僕らしくなかった。
小さく咳をする。
この教室中の空気が、段々と心地よくなっていくのを感じた。
そうか。
この、今感じているありのままの気持ちを、伝えればいいのか。
落ち着きさえ取り戻せば、僕にできないことは何もない。
「冴木、少しだけ、僕の話を聞いてほしいんだが・・・」
「はい、どうぞ」
「えっと・・僕は不器用で、感情の起伏が激しくて、とても短気な性格だ」
「はい、知ってます」
「そう、冴木がそれを知っているということを、僕も知ってる、だけど君は、そんなどうしようもない僕にも、普通に接してくれるだろ?」
「はい、そうですね」
「それがわりと心地良いというか、安心するというか・・・」
「はい」
「それってつまり、どういうことなんだろうな・・・」
くそっ。
なんだこのもうあと一歩のとこで答えが出ないもどかしさは。
思わず、彼女に答えを委ねてしまったが、この感じを彼女は理解してくれただろうか。
つくづく、自分の不器用さに腹が立つ。
「ふっ、くく・・・・」
・・・・ん?
冴木、もしかして・・・
「笑ってるのか?」