【短編】放課後の生徒会室
「それは、笑いますよ」
冴木が笑っている。
あの、冷静沈着な冴木が。
それも、声を出して豪快に、笑っている。
それは僕にとって、あまりに意外すぎる反応で、けれどももっと意外なのは、その顔が案外しっくりきていたということだ。
「強いて言うなら、私は会長の、そういう鈍感で可愛いところが好きです」
「な、なにを言ってるんだ、お前は」
「自分の気持ちにも気付かないほど、あなたが不器用ってことですよ」
「いや・・益々、意味が・・・お、教えてくれないか?」
「嫌です」
「なん、だと」
何故だ。
冴木は答えを知っているんだろう。
じゃあ、何故・・・
何故そんな、嫌がらせのような真似を・・・
「私は会長の口から、聞きたいんです」
「僕の、口から・・・」
それができないから苦労しているというのに。
なんだか今日の冴木は、いつになくワガママだ。
それも、不思議と不快に感じられないのは、きっと、彼女が・・・
いや、違う。
僕が、彼女のことを・・・
・・・・・あ。
分かった、かもしれない。
ようやく僕は理解した。
彼女が答えを教えてくれない理由も、思わず吹き出した理由も、なにもかも。
そしてやっと、答えに行き着いた気がする。
「本当に僕は、どうしようもないな・・・」
「・・・・え?」
「気付くのが遅くなって、本当にすまない・・・僕は冴木のことが、好きだ・・・」