甘く熱いキスで
ライナーの謹慎解除を明日に控えた日、ユリアはぼんやりと部屋の窓際に座って外を見ていた。

ヴィエント王国へ遠征に行っていたときのように毎日連絡は取り合っているものの、会えないというのはやはり寂しい。

こんなに不安になるのは、どうしてだろう。

ライナーと身体を重ねた後すぐに引き離されてしまったせいか、ライナーを信じたいと思う気持ちがどんどん小さくなっていく。

ユリアははぁっと盛大にため息をついて立ち上がった。

あまり塞ぎこんでいても仕方がない。ユリアは中庭へと向かうために部屋を出た。今頃の時間ならフローラとミアが中庭にいるかもしれない。

階段を降り、城のエントランスから廊下を進んで行こうとすると、見覚えのある男性が歩いてくるのが見えた。

エルマーの執務室や会議室など軍部関係の部屋が集まる塔から帰ってきたらしい白髭の老人は、ベンノ・カペル――ライナーを養子にした男だ。

ベンノはユリアに気づくと少し早足で近寄ってきて、目の前で立ち止まる。

「ご機嫌麗しゅう、ユリア様。城でお会いするのは珍しいですなぁ」
「そうね……」

ライナーの話から察するに、ベンノはライナーを自分の立場を確固たる物にしたくて“買った”のだ。元々、議会での態度もあまりいいものではないように感じていたユリアは、頬が引き攣りそうになるのを俯いて隠した。ポーカーフェイスは苦手だ。
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