甘く熱いキスで
「恋に恋をしているかどうかは、これから見極めるのよ。少なくとも、行動を起こさなきゃ何も始まらないわ。これも繰り返しになるけれど、貴方は私以外の女性とも交流をするべきだと思うの。まぁでも、キス魔の従姉妹に毒されたって言われない程度がいいわよ」

そう言って掴まれていた手を払うと、ユリアはまた廊下を歩き出した。

「ユリア!」

だが、アルフォンスはユリアの前へと回り込んで立ち塞がった。そしてユリアの肩を掴んで廊下の壁に押し付ける。

「見極めるなら、俺ともちゃんと向き合えよ。弟扱いはもううんざりだ。俺とはキスもしないくせに、運命の相手じゃないって決めつけるのはフェアじゃない」
「誰とでもキスをするキス魔とは違うの」

身長差のせいで、弟分であるアルフォンスに見下ろされる形なのが気に食わなくて、ユリアは鳩尾――炎属性の力の源――に力を入れて故意に体温を上げた。ユリアの肌からパチパチと火花が散って、アルフォンスが少し顔を歪めたが、ユリアの肩をより一層強く掴んでくる。

「こういうのが弟扱いしてるって言ってるんだ!そうやって、俺がいつまでも“ユリア姉”に敵わないって思ってる」
「敵わないわよ。今だって、手が痛いくせに。離さないと本当に燃えるわよ」

チラリと視線をやったアルフォンスの手は、真っ赤になっていて痛そうだ。アルフォンスも熱を逃がすように呪文で対抗しているようだが、ユリアは手加減してやるほど甘くない。

「敵う!燃えてるのは、俺の気持ちの方だって証明してやる!」

気合いを入れるためなのか、アルフォンスは少し大きな声を出してユリアに顔を近づける。長めの真っ赤な前髪が揺れて、アルフォンスの唇が迫ってくる。
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