甘く熱いキスで
「ライナーとユリアが城で会うことには、制限が加わる。おまけに、ライナーと引き離せばユリアが会いに行くと確信していて今回の件を利用してるんだ。俺の言ってること、わかるだろ?」

アルフォンスの顔が苦しそうに歪められ、それからユリアから視線を逸らす。

きっと、アルフォンスは気づいている。ユリアとライナーが会って何をしているのか。

アルフォンスは呪文を唱えて手のひらに炎を吹き出してユリアに差し出した。アルフォンスの記憶を映す炎だ。

ユリアはそれを見るべきか迷ってアルフォンスを見上げた。

「陸軍所属でも、俺はユリアや王族に近すぎて警戒されてる。だからこそ……これが、真実だ」

ユリアは口元へと持ってこられた炎を受け取り、もう一度アルフォンスの表情を確認するように見てからそれを飲み込んだ。

じわりと脳へ直接響くような熱さが広がって、アルフォンスの見聞きしたことが再生される――

『ライナーはどうしている?』
『貴方の命令通り、毎夜ユリア様とお楽しみのようですよ』

ベンノが執務室の窓際で炎を介して会話をしているところだ。相手の声は、ユリアには聞き覚えがないもので誰なのかは判断できない。

『そうか、絶好の機会を与えてやったんだ。せいぜい種付けに励むように言っておけ』

ベンノがフンと鼻を鳴らすと、炎がゆらりと揺れて卑しい笑い声が響いた。
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