甘く熱いキスで
『その点は、問題ないようですが……ユリア様も、結局は一般人の血が入っている。さすがヴォルフ様を誑かした母親を持つだけあって簡単に足を開くようですよ。それよりも――』
『あぁ、わかっている。アイブリンガーはもう終わりだ。ヨーゼフが死んでからは私の手の上で転がっているからな。ユッテはもう正気じゃない。潜り込ませている世話係が署名させる。文字が書ければいいがな』
ベンノはそう言うと、執務机へと歩いていき引き出しから何か書類の束を出して口元を緩めた。
『ユリア様が孕めばこっちのものだ。ライナーとユリア様の子供はカペルの跡継ぎとして育てる。カイ様がいるから降嫁させるのは問題ないだろう。お前とライナーの縁も切ってもらうが』
『構いません。あれは元々産ませるつもりなどなかったものを、シュトルツの法に縛られた頑固な老いぼれが“救った”自己満足の命です。ビーガー家には必要ない』
『フン……金のなる木として使っていたくせによく言うわ。まぁいい。お前に金を払うのもこれで最後だ。やっとファルケンの地位を回復、いや、それ以上に押し上げられる』
――そこまで見て、ユリアは無理矢理記憶の再生を止めた。元々人の記憶を見ることにはかなりの体力と精神力が必要なのに、その気の流れに逆らったせいで眩暈がした。
「こんなの、あの人たちの勝手な計画だわ」
気持ち悪い。
こんな汚い欲がこの世に存在すること――そして、アルフォンスの言う様にそれが真実であることが恐ろしい。
『あぁ、わかっている。アイブリンガーはもう終わりだ。ヨーゼフが死んでからは私の手の上で転がっているからな。ユッテはもう正気じゃない。潜り込ませている世話係が署名させる。文字が書ければいいがな』
ベンノはそう言うと、執務机へと歩いていき引き出しから何か書類の束を出して口元を緩めた。
『ユリア様が孕めばこっちのものだ。ライナーとユリア様の子供はカペルの跡継ぎとして育てる。カイ様がいるから降嫁させるのは問題ないだろう。お前とライナーの縁も切ってもらうが』
『構いません。あれは元々産ませるつもりなどなかったものを、シュトルツの法に縛られた頑固な老いぼれが“救った”自己満足の命です。ビーガー家には必要ない』
『フン……金のなる木として使っていたくせによく言うわ。まぁいい。お前に金を払うのもこれで最後だ。やっとファルケンの地位を回復、いや、それ以上に押し上げられる』
――そこまで見て、ユリアは無理矢理記憶の再生を止めた。元々人の記憶を見ることにはかなりの体力と精神力が必要なのに、その気の流れに逆らったせいで眩暈がした。
「こんなの、あの人たちの勝手な計画だわ」
気持ち悪い。
こんな汚い欲がこの世に存在すること――そして、アルフォンスの言う様にそれが真実であることが恐ろしい。