甘く熱いキスで
彼らがアルフォンスに気づいていないからこそ出た本音。ここまで人のことを、見下し、利用し、そしてあっさりと捨てることのできる人間がいることが腹立たしく、信じられない。

ユリアはライナーに会いたくて、触れて欲しくて、自分の意思で行動している。そのはずなのに……それがすべて仕組まれていることだというのか。

「あの人たちの思い通りにはならない」

ユリアは首を横に振って心に浮かぶ疑いをかき消した。ユリアの気持ちは誰かにコントロールされているような軽いものじゃない。

「ユリ――」

ユリアは再び伸びてきたアルフォンスの手を乱暴に振り払って部屋へと入った。素早く窓に鍵を掛けると、窓の向こうでアルフォンスが泣きそうな顔をしているのが視界に入ったけれど、ユリアはカーテンを閉めて視界を遮る。

違う。そう何度も心の中で呟きながらも、不安に駆られるのはなぜなのだろう。

――「自分の身分をきちんと理解しろ。そうでなければ、今回のように他の者に利用される」

ヴォルフの忠告が思い出されて、ユリアは拳を握り締めた。

利用なんてさせない。これはライナーとユリア、2人の人生だ。早くヴォルフに結婚を認めてもらい、きちんと国王の承諾を得た婚約、そして結婚として扱ってもらわなければならない。

そのためには、ライナーを城に呼び戻すことが必要だ。

ユリアは人差し指に炎を灯した。先ほど会ったばかりのライナーに、伝えなければならないことができたから――

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