甘く熱いキスで
それから1週間、2週間、そして1ヶ月――…

ユリアはライナーに会いに行くことをやめ、時間はゆっくりと……しかし、確実に進んでいった。

ユリアがライナーを訪ねることがベンノの利益につながるというのなら、それをやめるのは当然のことだ。

何度もこっそり会いにいけばバレないかもしれないという思いに負けそうになったけれど、その度にライナーと炎を介して連絡を取り合うことで我慢した。

アルフォンスがユリアを厳しく監視するようになったことも、今のユリアにとっては有難く受け止めるべきことなのかもしれない。アルフォンスが告げ口したのか、イェニーやカイ、フローラまでもがユリアの行動を把握したがるようになったのは少し鬱陶しいと思うけれど……

「今日、城下町の警備に参加したから土産だ。ユリア、ここのお菓子好きだろ?」

今日もまた夕方の報告会議を終えてユリアの部屋にやってきたアルフォンスは、テーブルの上に可愛くラッピングされたクッキーを置いた。そしてユリアの向かいに座り、先ほど侍女が用意してくれた紅茶に口をつけた。

ユリアはそれを見てため息をついてソファに深く座って背を預けた。

毎晩のようにアルフォンスの相手をして、彼が夜勤のときは何かと理由をつけてイェニーやフローラが部屋にやってきて……ライナーと話をする僅かな時間さえ作るのが難しい。

初めはユリアとライナー2人のためだと我慢していたユリアも、イライラし始めている。元々、何かを我慢することは苦手であるし、1ヶ月近くもライナーに会っていないのに、ベンノはライナーを精鋭部隊へ戻そうとしない。
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