甘く熱いキスで
「アル、こんな風に毎日見張りに来なくても、もう抜け出したりしないわ」
「確かにユリアにしては頑張ってるけどさ」

アルフォンスはそう言って、クッキーの袋を開けた。ユリアに買ってきたと言ったくせに、ユリアよりも先にクッキーを食べようとするアルフォンスにまたムッとして、ユリアはそっぽを向いた。

「拗ねるなよ。ほら」
「いらない!」

アルフォンスに差し出されたクッキーを無視してソファから立ち上がって窓際へと逃げる。窓を開けると、涼しい風がユリアの頬を撫でて、少しだけ気分が落ち着くような気がした。

「また窓開けて……寒いだろ」

アルフォンスは眉を顰めてユリアの元へやってくると、開けたばかりの窓を閉めてしまった。途端に熱気が篭ったような気がして、ユリアはもう一度窓に手を掛ける。

「もう窓を開けて過ごすには寒い季節になってきてる。風邪引くぞ」

フラメ王国は四季のある国だ。春から秋は比較的温暖な気候ではあるが、大陸の北に位置するだけあって冬は雪が降ることもあるし、それなりに寒くなる。

雪の日に生まれたユリアは、寒いのは好きだ。もうすぐユリアの生まれた季節が巡ってくるはずなのに、身体が火照る。

アルフォンスの言うように、風邪を引いたのかもしれない。ライナーに会えないという精神的な不安、ストレス……食事の量が減ったことも自覚しているし、それが体調に影響しても不思議ではない。

ライナー――声だけじゃ、足りなくて。触れたくて、触れて欲しくて。そばに居たくて、そばに居て欲しくて……会いたい。

「ユリア……」

じわりと滲んだ視界、同時にアルフォンスが苦しそうにユリアの名を呼ぶ。

「ライナーに、会いたい……っ、うっ」

一度流れ始めれば涙は止まらず、ユリアは両手で顔を覆ってその場にしゃがみこんだ。
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