甘く熱いキスで

運命の分かれ道(2)

「間違いありません。ユリア様は妊娠なさっています」

クラドールの診断結果は、その場に集められた誰もが予想していた通りの結果だった。イェニーとエルマーは苦い表情になり、アルフォンスは壁を思いきり叩いて呻く。

ヴォルフは震えるフローラの肩を抱き寄せてユリアのベッドへと近づいた。

ユリアは苦しそうに呼吸を繰り返し、時折ライナーの名を呼んでいる。フローラが子供たちを身篭っていたときと同じ……違うのは、彼女が求める温もりが今ここにはないということ。

ライナーとの婚約を正式に認めないまま、それも、ライナーが北地区のビーガー家にいるタイミングでこの状況はあまり良いとは言えないだろう。

ヴォルフにしてみれば体裁などどうでも良いが、黙っていないのは議会――ベンノ・カペルだ。

「どうするの?」

エルマーがヴォルフたちの隣に立ち、問う。

「ライナーを呼び戻せ。今すぐにな」
「わかった」
「ちょっと待てよ、エルマー伯父さんもヴォルフ伯父さんも、本気でライナーがユリアと結婚する気だって思ってるのか?」

エルマーが扉へ歩き出そうとすると、アルフォンスがそれを遮るように大声を出す。

「少なくとも、ユリアはそう思っているんだろう。だから、こういうことになった」
「ヴォルフ伯父さんはユリアを甘やかしすぎだ!城を抜け出してたことだって知ってたんだろ?なんで黙って見てるんだよ!」

アルフォンスの泣きそうな表情に、ヴォルフは思わずフローラの肩を抱く手に力をこめた。
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