甘く熱いキスで
「お母様……」
「ユリア」

意識が戻ったらしいユリアのか細い声が聞こえて、ヴォルフは視線をベッドへ向けた。アルフォンスもハッとして顔を上げ、立ち上がる。

「ライナーは……ご両親のこと、きちんと話してくれたの。ずっと、1人だった…………あんな、風に、皆に蔑まれてっ……私、何の役にも立てないのが、悔しくて……」

ユリアが途切れ途切れに話す。

「でも、隣にいることは……できた。家族を増やすことも、できる…………私……ライナーと私には、お母様とお父様と同じ、運命があると信じているの。お父様みたいに、うまくできなくても……ライナーとこの子を守るためなら、私は、戦えるわ」

そう、ハッキリと宣言したユリアの瞳は、高熱に潤みながらもしっかりとした炎を宿していた。

ヴォルフに似て感情のままに行動してしまうユリアを心配していた。見守っているつもりでいたのに、ユリアはユリアなりにいろいろなことを考えている。

子供たちが自分たち夫婦に憧れてくれていることは、この上なく幸せなことで……でも、だからこそ――フローラとヴォルフが経験してきたような苦労はさせたくないとも思っていた。

もちろんライナーとユリアが運命にたどり着くまでに必要な困難ならば、ヴォルフやフローラはやはり口出しするべきではないのだろうが……
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