甘く熱いキスで
ライナーに会いたい――一番強くユリアを支配する本能は、苦しさとして現れる。クラドールに気を少し静めてもらったが、あまり強い呪文は胎児への影響を考えて使えない。結局は、ユリア自身が我慢するしかないのだ。

「ライナー……」

無意識に呟いたライナーの名前は、部屋の静けさに溶けていった。

ユリアの看病をしてくれていたフローラも、訓練の時間ギリギリまでユリアの部屋に居たアルフォンスも、それぞれ公務と訓練へと出かけていき、ユリアはひとりぼっちだ。たまにクラドールが様子を見に来てくれるけれど、彼らにも仕事があって付きっきりというわけではない。

普段なら何とも思わない一人の時間も体調が良くないせいか、寂しくて仕方がない。どうしても、ライナーの温もりを感じたくて……

そんなことを考えていたせいか、チリッと下腹部が熱くなった気がしてお腹に手を当ててみる。

一瞬の違和感は――

「ラ、イナー……?」

ユリアはゆっくりと身体を起こしてベッドを降りた。

ふらふらと部屋の扉へ歩き、廊下へ出る。なんとなくだけれど、少しだけ身体が楽になったような気がするのは、ユリアの勘違いだろうか。

ライナーが城にいると……思うのも。

手すりに寄りかかるようにしながら階段を下りていく。ふらつく足が段差を踏み外しそうになる度に冷や汗が出て、それでも、ライナーに会えると思うと身体も軽くなるような気がする。

ようやく城のエントランスまでたどり着くと、そこにいたのはやはりライナーだった。
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