甘く熱いキスで
アイブリンガー家の自分の部屋を焼き払い、北地区のビーガー家で過ごした小屋も同じように……フラメ城にあった私物はすべて北方警備の待機所に持ってきていたため、処理は楽だった。

これで、すべてがライナーの望むようになるだろう。

親子揃って王族に害をなしたアイブリンガーの名はもう使い物にならないくらい地に落ちただろうし、ビーガー家が受ける損失も大きいはずだ。ライナーが“契約違反”をした代償は父親が払うことになる。しかし、金が戻っても名声は戻らないカペル家は、ライナーという仮初の跡継ぎさえ失った今、没落の一途であろう。

ユリアも子供も、この先ライナーと同じように蔑まれながら生き、国王夫妻にもその責任は及ぶ。

ライナーに“不必要”という烙印を押した出来事に関わった人間たちが、その意味を知る。

それが、ライナーの求めた自分の存在意義で、作った人生の意味だ。

「違う道など……ありはしない」

そう、声に出して呟いたのは自分に言い聞かせるためだった。

――「どうして違う道を歩もうとしないの?私と、この子と、もっとこれからたくさん――」

ユリアの隣に立ち、家族を作ることなどライナーの望むことではないし許されない。

彼女を見る度に理不尽な運命を呪い、嫉妬を憎しみへと変え、ようやく辿りついた運命の交差点。交わった運命のその後を、また苦しみながら生きようなどとは思わない。

自分が受けた苦しみを生まないために、などという聖人のような生き方をするつもりもない。

身勝手な復讐、逆恨み――ライナーを産ませた祖父の身勝手な信仰心と、両親が罪人というだけですべての人間から蔑まれてきたライナーの苦しみを無視する言葉。世の中は所詮、汚い思いであふれかえる醜いものだ。ならば、その流れに身を任せるほうが楽になれる。
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