甘く熱いキスで

求める温度

――「さようなら、運命の人」

ライナーの言葉がリフレインする。

全部、全部、ユリアのひとりよがりだった。ユリアはライナーの本心を理解できず、そう努力することさえもライナーを傷つけることだったのだ。

ライナーに触れてもらえることが嬉しくて、ライナーと分け合った体温が新しく炎を灯して……また舞い上がって自分の気持ちを押し付けた。

ライナーは喜んでくれると、信じて疑わなかった。今だって……ライナーの本心はあの言葉とは違うところにあると信じている。

苦しい。

ライナーはずっと、こうして皆から拒絶されてきたのだ。ライナーにしてみれば、自分が生まれながらに軽蔑の対象であることは、ヴォルフとフローラ、そしてその間に生まれたユリアに原因があると思うのも仕方のないことなのかもしれない。

許されない行動をとったのは、ライナーの両親。だが、彼らをそこまで追い詰めたのは……ヴォルフとフローラの婚姻だ。

そして2つの命は、正反対の“家族”の元に生まれ落ち、ライナーを苦しめた。ライナーの存在すら認識することなく、何一つ不自由なく生きてきたユリアに求婚されて……

――「これほど屈辱的な人生はないでしょうね」

「っ、ふ……っく、うっ、ライナー」
「ユリア……お腹の子に障るから……」

泣きじゃくるユリアを抱えて部屋に戻ってきたアルフォンスが、曖昧にユリアを慰める。しかし、ユリアの心を占めるのはライナーがユリアを拒絶したということばかり。

アルフォンスはユリアの頭を撫でてくれるけれど、ライナーの温もりとは違う。
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