甘く熱いキスで
――「お前とその子のことは、考える。お前が納得の行く形では……ないかもしれないがな」

ヴォルフが新しく宿った炎を消すとは思えない。しかし、王女というのは、父親のいない子供を堂々と発表できる地位ではない。だとしたら、ヴォルフはユリアの相手を探すだろう。

おそらくは、王家と親交深い貴族の中でユリアとの縁談を望む者、尚且つ“父親”としての責務を果たせる者。

「ヴォルフ伯父さんには話してきた。俺がユリアと結婚する。頻繁に城に出入りしてた俺なら、“言い訳”もなんとかなる。その子は……俺の子として育てる。誰が何と言おうと……俺がユリアとその子を守ってやる」

ユリアのお腹に宿ったのがアルフォンスの子供だと信じる者はほとんどいないと言っていいだろう。しかし、アルフォンスがユリアにアプローチしていたことも周知の事実であり、部屋に2人きりになることもあったユリアとアルフォンスの可能性を100%否定できないのも事実だ。

ライナーとのことが公になれば、捨てられた王女として中傷を受ける。だが、そこにアルフォンスを間に入れることで……少なくとも、表向きは収拾がつく。

「前国王夫妻の別邸に移り住めば、悪い噂も耳にしなくていい。俺はどこにいても城には通えるから……」

ユリアを見つめるアルフォンスの瞳がとても真剣で、彼の本気を伝えてくる。

「もう、いいだろ……?これ以上ライナーを追いかけてもつらいのはユリアだ」
「アルは?そんなことをしたら、アルだって、もっと皆から敬遠されるわ。それに……わ、たし……あんな風に言われても、まだライナーが好きなの」

そう言うと、アルフォンスは強くユリアを抱きしめた。
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