甘く熱いキスで
ユリアが落ち着くまで寄り添ってくれていたアルフォンスだが、しばらくして再び処置をしてくれたクラドールが出て行くのと一緒にヴォルフの元へと去って行った。

戦う、と決意した矢先にライナーから拒まれてしまったユリアは気だるい身体をベッドに沈めている。

熱い――クラドールが呪文を入れてくれると、少し楽になっていたはずの身体は、どんどん熱を増しているように思える。
「……怒って、いるの?」

お腹に手を当てて呟いてみるが、返事はない。ユリアがフローラのお腹に居た頃は、時折炎が灯ってお腹が膨らむ頃には声も聞こえたらしいが、さすがにまだ宿ったばかりの赤ん坊とはコミュニケーションは取れないようだ。

しかし、ユリアの呟きに答えるように身体の内側から熱が広がっていき、呼吸が荒くなる。

何か……変だ。

ユリアははぁっと熱い息を吐き出してベッドを抜け出した。よろよろと窓際に歩いていき、冷たい窓に額をくっつける。

弱っているとはいえ、ユリアがアルフォンスの申し出に心が揺らいだことを咎めているのだろうか。アルフォンスのキスを拒めず、それでいてライナーのことを諦めるという選択肢がないユリアはライナーに見捨てられても仕方ないのかもしれない。

「ライナーに、会いたいの?」

その瞬間、ボッとユリアの身体の回りに火の粉が散ってまた体温が上がる。ユリアは立っていられなくてその場に座り込んだ。

ユリアも……会いたい。けれど、ライナーがどこに行ったか心当たりなんて何もなくて、またユリアがライナーを知らないという事実が心に降り積もる。

「っ、はっ……く…………ライナー……ど、こ……に……」

ライナーの居場所さえわかるなら、ユリアはどこまでも追いかけるのに。

苦しい。ライナーに会いたい。ユリアだけでなく、お腹の子もライナーを求めている。だから、待ってほしい。帰ってきて欲しい。
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