甘く熱いキスで
「私はライナーのこと、わかってあげられないかもしれない。結局、私は甘えたな何もできない王女よ。でも、最初から何もかも諦めていたライナーには、私の気持ちだってわからないわ!」

言いたいことはもっと違うことなのに、ライナーが目の前で自らの命の炎を消そうとしたことがショックで自分のわがままをぶつけてしまう。

ユリアがどれだけライナーを好きなのか。

お腹の子がどれだけライナーを必要としているか。

ライナーのもとへユリアを連れてくるくらい、ユリアとお腹の子の気持ちはライナーに向かっているのにどうしてわかってもらえないのだろう。

「生きる意味って、何?この子じゃダメなの?ライナーのところに、連れてきてくれたのよ……まだ小さくても、ライナーのこと、ちゃんと父親だってわかっているのよ」

憎んでいる相手に宿した子でも、半分はライナーの血を引いているのに、それすらもライナーにとっては生きるに値しない事柄なのか。

「ライナー」

震える唇でライナーの名前を呼ぶ。

ライナーは泣きそうな顔でユリアを見て、ユリアの肩に顔を埋めた。

「父親になど……なる資格がありません。私は貴女をひどく傷つけたのですよ。お腹の子のことも、見捨てました。なのに、どうして……どうして、追いかけてきたのです?」
「ライナーが好きだからよ。私も、この子も……見捨てるつもりだったのなら、どうして、呪文を……使ったの?」

ユリアを抱きしめてくれたのは、勘違いじゃない。

まだ、ライナーを信じているユリアにはそれだけで十分だった。
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