甘く熱いキスで
どれくらいそうしていたのだろう。

「ユリア――!」

突然響いたその声に、ライナーはゆっくりと顔を上げる。

目が霞んでぼやけているが、赤い髪の毛は認識できた。アルフォンス――ユリアの従兄弟で、彼女に想いを寄せている男は、ユリアをライナーの腕から奪って抱きしめる。

ライナーはアルフォンスが呪文を使う気配を感じて自分の気を止め、そのまま砂浜に倒れこんだ。

「アルフォンス、あまり動かしちゃダメだよ。ライナー……なんでこんな……とにかく良かった、見つかって」

後から駆けてきたエルマーはライナーに近寄り、身体を温めてくれる。先ほどライナーが発していた熱とは比べ物にならないくらいしっかりと強い呪文に安心する。

なんとか体温が戻り、意識がしっかりしてきたところでエルマーに支えられて起き上がり、アルフォンスの腕の中でまだ目を覚まさないユリアに視線を向けた。

アルフォンスの上着を着せられ、炎に包まれているのにユリアの顔色は戻らない。

「ユリ――」
「触るな!」

ライナーが伸ばした手を、アルフォンスが跳ね除ける。

「お前に、ユリアに触れる資格はない!」
「アルフォンス、落ち着いて。今はユリアを城に戻さないと。クラドールに診てもらわないとダメだ」

エルマーはユリアの頬に触れて顔を顰めた。

「ライナーも立てる?」
「はい……」

ライナーはエルマーの肩を借りて立ち上がり、そのままエルマーが使う移動呪文に身を任せた。

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