甘く熱いキスで
城に戻り、ユリアと共に治療室へと運ばれたライナーはきちんとしたトラッタメント――治療――を受けてベッドに寝かされた。

隣のベッドにはユリアがいて、クラドールがまだトラッタメントを施している。

顔を横に向けると、まだ意識は戻らないが顔色は大分良くなってきたようだ。

「気分はどう?」

エルマーから声を掛けられ、ライナーは彼に視線を移す。

「私は……大丈夫です。それより、ユリア様と……」

ライナーは元々、軍で鍛えているし体力もある。かなり激しい消耗だったが、クラドールに体温を戻してもらった時点でほぼ回復したと言ってもいい。一応形式上はベッドに寝かされているが、起きて動いても特に問題はなさそうだ。

しかし、ユリアは違う。もちろん呪文の鍛錬などもしていただろうけれど、ライナーとは比べられない体力差の上に身重である。

「とりあえず、体温は戻りそうだね。やっぱり繊細な呪文は染み込み方が違うみたい」

エルマーが施してくれたのは、いわゆる応急処置だ。クラドールは高度な技術を持った治癒呪文に特化した専門家だ。彼らはライナーたちフラメ国民とは違って水属性の呪文を使う、フラメ王国の南に位置するマーレ王国という小さな国の出身の者が多い。炎属性は刺激が強すぎてクラドールは育たないのだ。

そのため、国民の8割がクラドールの資格を持つとも言われる医療大国からクラドールを雇うのである。
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